第 152 回 宇都宮巡検の報告 ~イチゴ農家と日光街道・大谷の地下空洞めぐり~

 第 152 回社会科学習会は令和元年 10 月 20 日(日)に宇都宮の巡検を開催いたしました。当日は快晴で、参加者の10 名でレンタカーを利用しながら、宇都宮市内をめぐりました。また現地講師として、増山孝之先生(栃木県宇都宮市立若松原中学校長・県中社研会長)と篠崎和一様(篠崎農園)から貴重なお話を伺いました。

9:30 【JR宇都宮駅集合】

 宇都宮駅の待ち合わせポイント、餃子の皮に包まれたビーナス(餃子像)前で集合しました。当日は、自転車レースのジャパンカップで、多くの自転車乗りの方が用意をしていました。


9:45 【二荒山神社】

 当日は七五三を祝う家族連れの姿が多数見えました。河岸段丘の上にあり、かなり自動車で登ります。現地講師の増山孝之先生(栃木県宇都宮市立若松原中学校長)により、宇都宮城の歴史や地形のご説明をいただきました。

二荒山

 ・徳川家康が、関ヶ原に引き返す評定を開いた場所。

 ・この近辺に湧水があり、宇都宮の発祥の地。

宇都宮城

 ・日光を訪れるときの、将軍の居所。そのため、内部の作りは、家具に至るまで江戸城と同一。最も多いとき、24 万人の行列をつくり、日光に参拝。

 ・譜代大名の最初の任地になることが多かった。後に老中になるような人物の出発点。

 ・幕末は、新政府軍と旧幕府軍の戦いの地となり、土方歳三が足に銃撃を受け負傷している。


11:00 【追分(清住交差点)】

 日光街道と奥州街道に分かれる「追分」です。しかし、宅地化と道路整備が進み、全く江戸の宿場跡のような様子は見られません。掲示板でようやくここが追分だと分かりました。

 このあと、「そば屋みます」で昼食を取りました。


12:00 【大谷資料館】

 午後最初は、大谷石記念館を訪れました。駐車場付近から、周囲の山は石切場のあとになっており、巨大な山肌に圧倒されます。石切場の中に入ると気温がとても低く、上着を着ることになりました。巨大な採石跡は、普段見ることの出来ない非日常的な光景で、多くの映画のロケ地やミュージックビデオの背景として使われました。

13:30 【大谷観音】

 大谷資料館から近いということもあり、大谷観音によりました。縄文時代から人が住み始め、やがて弘法大師作という千手観音が掘られた場所に作られた寺です。庭園には、白蛇の模型もおいてあります。

※千手観音は写真撮影禁止のため、公式 HP の画像でご覧下さい。

大谷寺 | 日本最古の石仏「大谷観音」と高さ27メートルの「平和観音」

English※上記ボタンをクリックして詳しい情報をご覧ください。大谷寺本尊千手観音(高さ4m)は、平安時代(810年)弘法大師の作と伝えられています。古くから大谷観音と称され、鎌倉時代に坂東19番の霊場となり、多くの人々から尊崇されてきました。最初は、岩の面に直接彫刻した表面に赤い朱を塗り、粘土で細かな化粧を施し、更に漆を塗り、一番表には金箔が押され金色に輝いていました。最新の研究では、バ―ミヤン石仏との共通点が見られることから、実際はアフガニスタンの僧侶が彫刻した、日本のシルクロ―ドと考えられています。千手観音には、千の手と、千の目が有ります。手のひらにも目があり、いつも私達を見守っています。そして、たくさんの手で宇宙にある全ての人々、生き物を救ってくださる有り難い観音様です。お参りの際は、その大きな心を想い、世界の平和と人々の幸せを願い、合わせて感謝の気持ちで合掌しお参りください。大谷観音御詠歌 「名を聞くも めぐみ大谷の観世音 みちびき給え 知るも知らぬも」その昔、この辺り一帯は大小の岩が、まるで屏風のようになっていて、その中は広く平らに広がり、大谷と呼ばれていました。岩下からは水が湧き出して川となり、自然が作った城のようでした。この中には毒蛇が住んでいて、時々毒水を流し出し、鳥獣虫魚がこれに触れると、たちまち死んでしまったため、ここを地獄谷と呼んでいました。人間がこの水に触れると病気になり、最悪の場合は死に至り、五穀は枯れ、草木もしぼみ、人々は苦しみ、この地を捨てようとしていました。 時に大同、弘仁(810年)の頃、弘法大師が東国巡錫の折この話を聞き、里人のうれいを除こうと毒蛇の谷に入って行きました。人々はこれを聞いて喜びました。十余日の後、谷から大師が出てきて、毒蛇を退治したと告げて立ち去って行きました。 人々が谷の奥に入り中の様子を見ると、高い岩山に光り輝く千手観音が彫ってありました。観音の光明は山谷を一面金色に変えました。人々は弘法大師の不思議な力に感謝し、大師の偉業を貴み観世音に帰依して仏教を信仰する者が増えました。これが大谷寺の始まりです。 今、池の中央に弁財天が祀られています。かの毒蛇が心を入れ替えて白蛇となり、お仕えしています。参拝後には、白蛇の頭にも軽くふれてください。本尊の千手観音はじめ、脇堂の釈迦三尊・薬師三尊・阿弥陀三尊の合計10躰の

大谷寺 | 日本最古の石仏「大谷観音」と高さ27メートルの「平和観音」


【台風 19 号による浸水跡】

 大谷地区は、巡検の一週間前、10 月12日に上陸した台風19号の被害を受けました。大谷観音の近くでは、被災の片付けの跡がそこかしこに見られました。

【宇都宮】大谷地区では、台風 19 号の影響で大谷町を流れる姿川があふれ、周辺の住宅が浸水。13 日には屋内や家財道具を片付ける住民らの姿が見られた。川沿いに住む男性(53)によると、12 日午後7時半ごろから床上に浸水。「最大で深さ 50 センチ以上はあった。2階に避難しました」と話した。

下野新聞 SOON Simotsuke Original Online News

(https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/231839) 2019 年 11 月 11 日閲覧



14:45 【多気山(多気不動尊)】

 さらに近くの多気山に行きました。200 段ほどの階段を上りました。多気山城の想定図を増山孝之先生から見せていただきました。現在は地権者が入り組み、調査や保存等ができていないとのことでした。


16:00 【篠崎農園】

 篠崎農園では、篠崎和一さんより、いちご栽培の説明をしていただきました。


 篠崎さんは農業を指導する農業士として、これまで 20 名の若手農家を育ててきました。いちごの品種や栽培方法、いちご農家の経営やライバルの福岡県のことなど、さまざまなお話を伺うことができました。


【終わりに】

 宇都宮を一日巡り、とても濃い巡検になったと思います。河岸段丘を登るところから始まり、歴史や土地利用の様子など、多くのことを学びました。ちょうど 2 年生の地理が、関東地方を行っていましたので、農業の様子などの写真を利用いたしました。

(記録 江戸川区立中学校 K先生)


社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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