第149回 社会科学習会(ミニ巡検)の報告

 第 149 回 社会科学習会は、令和元年 6 月 8 日(土)に「ミニ巡検 東京の尾根と谷」の第 4 回として開催されました。今回は有賀夏希さん(㈱東京地図研究社)を講師に迎え、「几号高低標を巡る」が主題でした。


 几号(きごう)水準点(高低標)とは、明治初期(明治初年からとも、明治7年、明治9年からとも)に高低測量を行うために設けた基準となる測量点です。 イギリス式の測量法に従って漢字の「不」に似た記号を不朽物(恒久的に残るであろうもの)に刻印したり、「不」を彫った標石を埋めたりして水準点としました。

 几号水準点は、石垣や門、神社仏閣の鳥居、灯篭、狛犬などの石造物、恒久的に残るであろうと思われるものに直接、刻まれました。しかし、明治 17 年に陸軍の陸地測量部がドイツ式の測量方式を採用したため現行の水準点にバトンタッチされました。

 当日のコースは、湯島駅→湯島天満宮→ニコライ堂→平将門首塚→竹橋→日本武道館→田安門→靖国神社→神楽坂毘沙門天でした。以下に当日の様子を記します。


(1)土地の高さを測る

 当日は梅雨の晴れ間の快晴でした。東京メトロ千代田線の湯島駅に集合し、湯島天満宮に向かいました。湯島天満宮の男坂を前にしてアクティビティです。男坂の上と下との高低差をどのようにして測るのでしょうか?地形図の等高線は東京のように宅地化されたところでは判別がつきません。方法は 3 通りです。

① 階段の一段の高さ × 段数 = 高さ

② 直角二等辺三角定規を利用して測定 ・・・この方法は、平成 20 年改訂の学習指導要領で数学に取り入れられた「数学的活動」についての解説書が具体的に示しています。授業で指導した事例は聞いていません。

③ 隣接する建物の階数から測定 ・・ 建物の 1 階は平均 2.5m 前後

ちなみに、湯島天満宮の几号高低標は正面の鳥居の台座に刻まれていました。

(2)神社は移転する

 湯島天満宮から、江戸の下町・神田明神下から昌平橋を渡り、ニコライ堂に向かいました。神田川に懸る昌平橋に立つと正面に東京メトロ丸の内線、右手の高架に JR 総武線、左の土手に JR 中央線が見えます。

 JR 中央線の土手に沿って御茶ノ水駅方向に進むと、駅の手前の聖橋の袂に御幣を張った御神木がありました。札には「太田姫神社元宮」とありました。現在、駿河台 1 丁目にある太田姫神社は大田道灌が勧請し、徳川家康の入府に伴い鬼門除けとして聖橋脇に移転しました。その後、昭和 6 年に総武線の拡幅工事のために現在地に移転しました。

 ニコライ堂の几号高低標は教会附属の建物の入口の石段下にありました。

(3)IT ツールを活用する

 平将門首塚を見学して皇居を左に見ながら竹橋に向かいました。皇居ランのランナーとすれ違いました。

 さて竹橋ですが、現在とは位置がずれているようです。そこで、「大江戸今昔物語」のソフトを活用し、旧の位置を確認しました。

 几号高低標は橋の台座と思われる石組みの下部、落葉に埋もれていました。


(4)歩幅を知って距離を測る

現在は万歩計が普及して、距離の測定にかなり使われています。歩測です。万歩計には自分の歩幅を入力します。では、自分の歩幅をどれだけ正確に知っていますか。アクティビティ2は、靖国神社の第一鳥居と第二鳥居の間を歩測しました。この間は約 300m あります。また、類似の距離測定の方法として舗道の敷石の一辺の長さを図り、その枚数から測定することもできます。

靖国神社の几号高低標は拝殿前の鳥居の台座に刻まれていました。


今回の巡検では、地形図の活用の基礎となることを多く学ぶことができました。(会長 記)

社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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