第143回社会科学習会は、平成30年12月22日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開催されました。今回は「実践発表① 評価に関して」というテーマで、F先生(港区立中学校教諭)及びW先生(大学附属中学校教諭)から実践報告が行われました。その実践報告を受けて、授業や定期考査、グループ活動の評価をどのように行っているのか、活発な意見交換がなされました。特に「関心・意欲・態度」をどのように評価しているのか、グループ活動をどのように評価するのかという点が議論の中心になりました。ご覧になった先生方の日々の実践の参考にしていただければ幸いです。
1.F先生の報告
F先生より、地理分野の学習カードの実践報告が行われました(下の「2年社会科地理 中国・四国地方学習カード」を参照)。
ポイントとしては、MQ(メインクエスチョン)を先頭に掲げ、単元を貫く問いを意識した構成にする(カードの①参照)、毎時間「MQ解決に関係すると思う内容」、「授業を受けて考えたこと」を記載させ、評価を行う(②参照)、単元の最後に感想及び発展課題を考えさせる(③参照)という点です。
A評価の基準としては、教師が授業内で教えた内容以外の自分の考えや感想等が書かれていることが目安となり、単元の最後の「発展課題」については、「新たな問い」、「問い設定の理由」の記述を評価します。生徒が授業を受けて考えたことに関連した何らかの内容が書かれていれば、A評価になります。
学習カードを、3クラス分およそ100枚をチェックし、次の授業の時間までに返却するのがなかなか大変であるとのことです。以下、質疑で出た内容を記します。
Q1:授業内で感想を書く時間はとっていますか?
A1:あまりとらない(時間的に取れない)。生徒は休み時間に書き、社会科の提出ボックスにその日の帰り学活までに提出させる。
Q2:BやCの基準は?
A2:授業で話した内容をそのまま書くのはB評価。単純に「役に立った」のような記載はC評価。少しでも自分なりに考えていればA評価。
2.W先生の報告
W先生からは、「関心・意欲・態度」、「思考・判断・表現」、「技能」、「知識・理解」の4観点の具体的な評価方法・観点についてご自身の例を報告して頂き、次いで「観点別評価・評定の算出の基本的な考え方」をご報告いただきました。これに基づき、各会員の評価方法について意見交換がなされました。やはり「関心・意欲・態度」の評価をどうするのかについて、議論が集中しました。また「主体的・対話的で深い学び」のためのグループ活動や発表をどのように評価するのかという点にも関心が集まりました。
【「関心・意欲・態度」の具体的な評価方法・観点について】
W先生:ノートを学習のポートフォリオとして評価(ノート点検では今回、板書をとっているかだけではなく、個人的な工夫やノートを振り返っての改善点を「ロイロノート」で提出させた。個人的な工夫については、メモをとる、色を工夫する、図やイラストを使う、自分で調べたことなどの具体例を説明させ、該当する箇所を三点提出させた、とのこと。)、提出物、授業の感想・意見文の内容、授業中の発言や態度・班活動・日常での会話の様子の見取りなどによる。
N先生:持ち物検査を点数化。授業に必要な「5点セット」を予告した上で、チェック。関心・意欲・態度に入れる。また、「社会科コンテスト」の点数も入れる。
M先生:10%程度であれば、学習意欲の評価材として持ち物・挙手の回数なども含めても良いという論議がこの制度の発足時にはあった。
【「思考・判断・表現」及び「技能」の具体的な評価方法・観点について】
W先生:レポートや小レポート(内容や課題の出し方により評価の観点は異なる)、定期考査での記述問題(資料等を活用した論理的な説明;思考)、資料を活用する問題(技能)、班活動の発表内容などによる。
→班単位での調査活動や発表内容について、どのように評価を行うのかについて、様々な意見が出されました。W先生はグループ活動の成果は、現状ではグループ全員の得点としているが、個別の活動レベルの差異をどのように判断するのかが難しいということが報告されました。グループ内での活動量や貢献の差や、一人の優秀な生徒が全て行わないか、成果物の作成や発表、イラストや図をまとめるなどの作業など、どのように判断するのかという点が指摘されました。グループワークを取り入れた授業が増える中で大きな課題でしょう。
【知識・理解の具体的な評価方法・観点】
W先生:定期考査、小テストが中心である。
→知識・理解については、概ね上記二点で集約されました。
【今後の課題】
W先生より、以下の点が挙げられました。
① 定期考査、学期ごとの学力評価になってしまいがち。単元で身につけるべき力がついたかどうかを単元ごとに生徒に提示することができているか?
② 個人内評価やグループでの活動どのように評価し評価に組み入れていくか。
③ 関心・意欲・態度の評価の難しさ→継続して研究が必要。
④ 生徒に評価を伝え、学習改善につなげる場や時間の確保(実はこれが一番、評価の目的として大切なのではないか?)
⑤ 評価方法の信頼性と妥当性を確保しつつ、いかに手間や無駄を省くか(働き方改革)
2018年12月18日~2019年01月09日までに、文部科学省が「「児童生徒の学習評価の在り方について(これまでの議論の整理)」に関する意見募集の実施について」という題でパブリックコメントを募集しています。この中には、関連情報として、「児童生徒の学習評価の在り方について(これまでの議論の整理)」がリンクされていますので、ぜひご参照ください。
(http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001023&Mode=0 2019年1月5日、閲覧。)
0コメント