夏季特別講演会(第139回 学習会)は、8月4日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開催されました。今年度は、平成国際大学特任教授(元全国中学校地理教育研究会会長)の平澤香先生に、「これからの地理教育 ~ 地図・フィールドワーク・GIS」というテーマでご講演いただきました。講演では、高等学校の学習指導要領の改訂を念頭に、中学校の地理教育の方向性についてお話を伺いました。以下に講演内容の概要を記します。
1.手軽に活用できるGIS
初めに、手軽に活用できるGISの紹介がされました。
講演会の会場である、新宿区立牛込第一中学校の地理について調べたい場合、Google Earthや地理院地図(国土地理院HP)、迅速測図を活用することにより、地形や過去の地図、空中写真、地形図などを手軽に参照できることが説明されました。
2.GISとは
GISとは、Geographic Information System(=地理情報システム)の略称であり、もともとはアメリカ合衆国空軍の防空システム設計のために作られました。今では、天気予報やカーナビゲーションシステムなど、我々の身近にも用いられています。学校教育におけるGISは、生徒が地図を読むための補助的な手段として活用することができます。例えば、地域調べのためにフィールドワークを行う際、事前にGoogle Earthや国土地理院地図を眺め、地域の基盤を考えさせることができます。その他、Google Earthを活用した授業例として、オーストラリアのニューマン鉱山(写真下)の採掘場・輸送路・港を見せたり、ヨーロッパ州において黒海からバルト海まで河川や運河で結ばれている様子を学習するなどの事例が紹介されました。
3.新しい学習指導要領とGIS
高等学校の新学習指導要領の地理総合を読むとGISの活用という面から以下の諸点が重要です。
①地図や地理情報システムなどの汎用的な地理的技能の育成
②位置と分布、場所、地域などの概念をとらえる地理的な見方や考え方の育成
③グローバルな視点からの地域理解と課題解決的な学習の展開
地理的な見方・考え方の育成と課題解決学習において、地理情報システムは、学習に不可欠なツールと言えます。講演では、学校現場で手軽に使うことのできる地図ソフトが紹介されました。
地理学習の上で、地図を描くということは、地理的事象を把握するために不可欠であり、地理的思考の出発点になります。手軽に使える地理情報支援ソフトとしては「MANDARA」(谷謙二氏HP)があります。このソフトは、エクセルで作成した地域統計データを地図化することができ、無料で使用できるGISソフトです。また地図作成ソフトとしては「地図太郎」があります。このソフトは、東京カートグラフィック株式会社のソフトで、レイヤー機能を使って地図を作成することができます(東京カートグラフィック株式会社HP)。
両ソフトの活用事例は講演会でいくつか紹介されましたが、ここでは二点を記します。
一つ目は、フィールドワークの事前学習でのソフトの利用です。明治時代に作られた埼玉県の「内舞台堰」のフィールドワークを行う際に、古地図の堰の位置と現在の地図を重ね合わせ、ルートマップの確認を行いました。
二つ目は、防災学習におけるハザードマップの加工です。生徒の住所を地形図上に記載し、さらに通学路を描きます。その上で、地図作成ソフトを使い、ハザードマップと重ね合わせ、通学路の危険度を認識させる活用例が紹介されました。
4.おわりに
ICT環境の改善で、現在、Google EarthやWEB上の国土地理院地形図を手軽に活用できるようになりました。また、「MANDARA」や「地図太郎」などの地理情報支援ソフトを活用することにより、手書きで行ってきた地図作成をパソコン上で行うことができます。講演の最後では、第一に、先生方も共同で地理学習の教材を開発し、共有すること、第二にGISを活用し、教員が率先して主体的・対話的で深い学びを行って欲しいことというお言葉をいただきました。
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