第136回の学習会は4月28日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開催されました。 今回は東京学芸大学非常勤講師でもある赤坂寅夫先生より、新学習指導要領中学校社会地理的分野についてや教科書・地図帳の資料を活用して思考力・判断力・表現力を育成する方法についてご講義いただきました。また、東京都立立川国際中等教育学校の山本葉月教諭より、授業事例や高校生に指導して感じていることをお話しいただきました。
① 新学習指導要領 地理的分野について(赤坂先生)
学習指導要領が改訂される際は、変遷過程を振り返り、今回の改訂の背景を読み解く必要があります。地理的分野における改訂の要点としては例えば、これまでの「世界の様々な地域の調査」と「身近な地域の調査」という対象地域の異なる二つの中項目の内容構成が見直されました。新たに、「地域調査の手法」と「地域の在り方」の二つの中項目に分け再構成されたことが示されました。また、世界の諸地域学習においては地球的課題の視点が導入されています。さらに、その他の例として学校現場の実情に合わせて改訂が行われていることが挙げられました(州ごとに設ける主題・各州の順序・観察や調査の学校行事等との組み合わせ等)。
新学習指導要領の目標については、「場所」と「地域」の違いについて意見を交わしました。「どんな場所ですか?」「どんな地域ですか?」という発問は教師が授業でどちらもよく発するものです。改めてその違いについて聞かれるととても難しいものであることが発見されました。英語では場所=place、地域=areaと訳す点からも違いがあるのではないかとのご意見もありました。また、自然的・歴史的要素が絡むかどうかも違いに関係するのではというご意見もありました。
内容については A「世界と日本の地域構成」では領土問題を丁寧に扱うこと、B「世界の様々な地域」では州をいくつかに区分したり、州をこえて地域を設定したりすることが可能である点が挙げられました。また、≪主題例と学習の展開例≫の③アフリカ州に砂漠化が登場(復活)していることが指摘されました。C(1)地域調査の手法では今まで以上に地形図を活用する必要があり、紙を使って作業することが技能の上で重要であるとのご指導がありました。また、学年としての防災教育は、今回ポイントとなっている「カリキュラム・マネジメント」が問われる事項であるとのご説明がありました。
② 授業事例(山本先生)
高校授業で活用したパワーポイント資料と中学1年生を対象としたオセアニア州とヨーロッパ州の授業プリントが提示されました。事前に宿題を出し、地域区分や地形などを事前に知った状態で班活動を行う形式で授業が展開されていました。ヨーロッパ州では「EU統合の課題」について高校の教科書から資料を提示し、重ね合わせで考えさせる授業を行ったそうです。
高校で授業をするようになり、中学校での知識の差がくっきり分かれており、中学校で知識を身に付けさせる大切さを知ったとのことでした。特に高校では日本の諸地域についてはあまりできないため、中学校で丁寧にやることが大切だそうです。
③ 教科書や地図帳資料を活用して思考力・判断力・表現力を育成する方法(赤坂先生)
帝国書院より発行されている『中学校社会科のしおり』(2018)に掲載されている「トラの巻」についてのお話がありました。地理的概念のわかっていない若手教員が教科書を使って思考力・判断力・表現力を育成するためにはどうすればよいかを示しています。その中で「中心資料」と「中心発問」についての話がありました。小学校の授業や道徳の授業ではしばしばみられる用語です。中学校であっても教師が提示する・生徒が考えるどちらの形であっても、どのような発問をするかが重要です。授業のねらいに即した発問を考えることで、授業の焦点化が図られます。また、深い学びをするためには教科書だけでは足りないため、様々な立場(視点)の資料を用意しなければならないということも指摘されました。
最後に地図帳の活用が小学校も含めて少ない現状から、活用方法について意見を交わしました。
(記録:江戸川区立中学校教諭 K先生)
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