第134回学習会は2月24日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開かれました。今回は昨年の12月19日(火)に開かれた東京都金融・金銭教育協議会(ホテルJALシティー田町 東京)での発表の報告と意見交換を行いました。この協議会は、東京都金融広報委員会の指定を受けた研究校と研究グループが一年間の成果を発表するものです。社会科学習会は平成29年度に初めて指定を受けました。学習会での報告と意見交換の概要を以下に期します。
1 はじめに
当日発表をされた渡邊智紀先生(お茶の水女子大学附属中学校)から以下の5校1グループの概要が報告されました。
① 小学校 立川市立幸小学校 大田区立大森第五小学校
② 中学校 府中市立府中第三中学校 大田区立安方中学校
③ 高 校 東京都立小平西高等学校 東京金融ワークショップ
小学校は発達年齢に即して小遣いの使い方、与え方など、中学校ではキャリア教育や社会科、家庭科、特別の教科道徳などと連携して、「もしひと月1万円もらえたら」として選択を体験させる学習(安方中)や財政についてのディベートや「父の借金」を教材として「信用」を取り扱った学習(府中第三中)が報告されました。小平西高校からは、先行事例としてキャリア教育として、就職者を念頭に求人票の見方を導入にして「確定拠出型年金」を取り上げ、運用を考えさせる学習が報告されました。今年の秋に公開授業があります。東京金融ワークショップ(都立高校公民科有志のグループ)からも同様のリスクとリターンを扱った事例発表がありました。
2 渡邊智紀先生の発表(お茶の水女子大学附属中学校)
(1) 社会科学習会の考え
① 中学校社会の基本的な学習形態(π型)を前提に金融・金銭教育を扱う。従って、公民的分野だけではない。
② 金融・金銭教育を人と物とお金の関係と捉え、三分野の学習内容と関連つけて扱う。
③ メリット1・・金融・金銭教育の側面から学習スパイラルが作られ、深い理解や考察が達成される。
メリット2・・金融や経済に関する基礎的な知識が、社会的事象の深い理解をもたらす。
(2) 事例の紹介
① ねらい:「中世の日本」「近世の日本」の授業を金融教育の視点から俯瞰し、関連する指導場面を指導計画に取り入れることで、歴史的事象の深い理解を図るとともに、金融・金銭についての理解を深める。
② 成 果:歴史的事象(社会の発展や変化)の要因を「お金」「もの」の視点も含めて多面的に考察できるようになった。そのことで、現代の金融・経済の仕組みの理解につながったのではないか?(次年度、公民的分野の授業で確認をしたい。)
③ 授業内容:「鎌倉時代の社会の発展と文化」で一遍上人絵伝「備前福岡の市」の読み取りで、中央の布を持つ女と紐を通した銭を持つ男、魚や鳥などの商品に着目させる。等
3 横山将太郎先生(東京都立深川高等学校)
都立高校入試の直後で採点業務のため欠席でした。指導案をもとに質疑が行われました。「直間比率の理想は5:5」の根拠、出典は何か、「公債」と「国債」を使い分けしているが生徒の理解は得られるのか?などの疑問が呈されました。
4 まとめ
少ない人数でしたが質疑応答はかなり密度の濃いものでした。前半は中学校社会についてでした。歴史的分野は小学校が人物や事跡が中心で分かりやすさがある。中学校では、政治史中心で分かりつらい部分を物とお金(経済の視点)を取り入れることにより理解が進むのではないか。経済的事象の変化や発展は分かりやすさがあると思えるなどの意見がでました。また、フェアトレードや希少金属の取引など地理的分野の取り扱いの工夫ができるのでないかなども話題になりました。
後半は高野先生(白鷗中等学校)を中心に高等学校での扱いが中心になりました。特に新学習指導要領が授業改善の視点として示した「主体的、対話的、深い学び」が話題になりました。今回の学習指導要領改訂が高校をターゲットにしたものであるとは言われても、従来型の知識への拘りや指導内容の多さ、受け身型の生徒の学習姿勢、大学入試が本当にどこまで変わるのか疑問がある等などの高校の実態が浮かび上がってきました。
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