第132回学習会は12月23日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開かれました。今回は「学習指導要領 中学校社会科と主体的・対話的で深い学び」と題し、文部科学省から藤野 敦 教科調査官をお迎えしての講演会でした。なお、この講演は東京都金融広報委員会の研究グループの活動の一環でもありました。
来年4月から移行措置が始まり、授業では学習指導要領の改訂の趣旨に則った展開が求められます。今回の講演の趣旨が活用されることを期待します。以下に概要を記します。
1 公立高校入試問題から
入試問題を2問取り上げ、学習の結論としての「確かな理解」を導き出す過程についての説明を頂きました。入試問題は、いずれも既習知識を前提に設問中に示された設問文やグラフ、年表、資料などから、解答を導き出すという構造でした。解答を導き出す際には視点を明らかにする必要があります。この視点として歴史的分野では、時期や年代など時系列に関わる視点、展開や変化、継続など諸事象の推移に関わる視点、類似や差異、特色など諸事象の比較に関わる視点、背景や原因、結果、影響など事象相互のつながりに関わる視点が考えられます。既習知識から設問に示された事象などを読み取り、前述のいくつかの視点から適切なものを選び、その視点や方法(考え方)を活用し、思考し、判断し、それを表現させると思考の過程になります。よく、授業の冒頭に資料等を示し、「この資料から何が分かりますか?」という発問がありますが、それでは不十分なことが分かります。
2 歴史的分野の学習構造
新学習指導要領は、例えば、江戸時代の「産業の発達と町人文化」を扱う場合、≺知識≻では「産業や交通の発達、教育の普及と文化の広がりなどを(b)基に、(c)町人文化が都市を中心に形成されたことや、各地方の生活文化が生まれたことを理解すること。」と示しています。また、≺思考力、判断力、表現力等≻では「~、産業の発達と文化の担い手の変化、~に着目して、事象を相互に関連付けるなどして、~近世の社会の変化の様子を多面的・多角的に考察し、表現すること。」と示しています。同解説ではこのことを「~『産業の発達と文化の担い手の変化』などに着目して、例えば、・・『なぜ町人が文化の担い手になったのだろうか』・・などの課題(問い)を設定することで、社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせて、その課題について、多面的・多角的に考察、表現できるようにすることが大切である。」と示しています。
現行学習指導要領は、学習過程を「~などを通して、~を理解させる。」と示しています。また、「理解」については、「思考や表現の過程なども踏まえて学習内容を十分に分かりながら身に付けることを意味しており、」と示しています。「理解」に至る過程を知識と思考力・判断力・表現力に分けて具体的に示しているのが新学習指導要領の特徴と言えます。授業を構造する場合大切なことは、視点を含んだ問いを設定するところです。
この他にも大変多くの示唆を頂きました。高等学校学習指導要領の告示を前に大変ご多忙の中をご講演くださった藤野敦先生に心からの御礼を申し上げます。
最後になりましたが、本年も社会科学習会の活動にご協力いただいた多くの方々に感謝申し上げます。新年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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