東京を初めとして緊急事態宣言等が全面的に解除されました。感染者数も劇的に減少しています。この原因はワクチン接種が進んだことだけでしょうか。予断は許されない状況と捉えることが賢明と考えます。
そのような中ですが、第165回の学習会は今、喫緊の要事である成年年齢引き下げの伴う課題について弁護士の中村新造先生からご講演を頂きました。なお、この講演は東京都金融広報員会の研究グループの活動として行われました。以下に講演要旨を掲げます。
1 背景
憲法改正の国民投票権を18歳としたのち、公職選挙法の改正により選挙権が18歳からとなった。これらを背景にして成年年齢を18歳とする構想が立ち上がった。特に少子高齢社会への対応として若年者が社会での積極的な社会参加が望まれるという事が強調された。
また、学校教育で選挙権の意義や国民の責任についても学習が進んでいると法制審議会等で説明があった。しかし、日本弁護士会連合会では時期尚早の意見書を提出、国会の参考人意見陳述でも主張したが、既定路線のような形で民法改正が成立した。私の疑問は、「引き下げた時の問題点は?」から始まった。
2 成年年齢の意味
現在は民法第4条で「年齢二十歳をもって、成年とする。」と規定している。起源としては大宝令が「其の男は廿一を丁とせよ」とされる。民法は私法の基準法であり、私人の行為能力や契約を示している。
最大のポイントは、成年の行った物品購入契約等の法律行為は取消しが出来ないというところにある。成年つまり大人の行為なのだから当然のことである。ところが、民法では未成年者に対して親の「親権」が規定されている。この親権により未成年の法律行為は取消しができること(未成年者取消権)によって詐欺やそれに類する悪徳商法等から保護されている。未成年取消権は若年者の消費者被害防止の防波堤(予防薬)であり、後戻りのための黄金の橋(特効薬)であった。親権は、他にも居所指定や就業許可、財産管理などが対象として示されている。
3 引き下げに伴う課題
これまでも、20歳台の消費者被害(マルチ商法や美容医療、エステティック、タレント・モデル契約など)が他の年齢を遥かに超える事実がある。マルチ取引の相談件数を20歳の前後で見ると約12.3倍、ローンやサラ金は約11.3倍となっている。
今後は、このような被害が18歳、つまり高校3年生に及ぶことは十分に想定できる。若年者への貸し付けについて日本貸金業界のアンケートでは約54%が親権者の同意を必要としない(未定を含む)と回答している。法に則った判断といえるが・・・。このような事実に対して教員研修や教員養成課程での消費者問題についての取組は甚だ不十分といえる。
なお、競馬、競輪等の公営ギャンブル、喫煙・飲酒は個別の法律で「20歳以上」となっていることは注視すべきところである。
全中社東京大会の開催
11月11日(木)~12日(金)の両日、東京都で全国中学校社会科研究会研究大会が東京都で開催されます。これまでに学習会に参加された方の多くが研究や運営に関わっています(11月の学習会は、こちらへの参加をもって替えます)。
参加等の詳細は下記の全中社研のホームページをご覧ください。コロナ対応で制約の多い中ですが教師にとって研修は欠くことのできないものです。オンデマンド配信もありますので是非、参加しましょう。大会紀要と併せて新学習指導要領に対応した単元指導計画も配布されるようです。
全中社研HP http://www.zenchusya.com/
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