第166回社会科学習会は、全国中学校社会科教育研究大会東京大会の参加に替えました。
コロナ禍でどのような形の大会になるのか。開催そのものが可能なのか等々。直前まで気をもんだ全中社研東京大会が 11 月 11 日(木)、12 日(金)の 2 日間にわたって「ティアラこうとう(江東区)」で開かれました。11 日は例年の開会式や記念講演はなく、理事会のみでした。この大変な時期でしたが、東京も含めて約 15 都道府県市の関係者が出席されました。2 日目は 3 分野の分科会が並行して行われ、冒頭に大会会長(全中社研会長)竹原眞、大会実行委員長(都中社研会長)佐藤敏数両先生の挨拶、基調提案が歴史的分野の会場からリモートで他の会場に配信されました。その後、各分科会で授業提案等が行われました。
今回の大会は極めて異例の形で開かれましたが、研究内容には都中社研らしさが良く見られました。それは大会の主題の扱いと、国が示した評価の 3 観点の趣旨を踏まえ学習指導要領を読み解き、独自に開発した4つの力を設定し、それらのマトリクスを示したところにあります。さらに、それを3分野が受け入れ、検証授業が行われたこともこれまでの都中社の研究体制に新しい方向性を示したものと考えます。この蔭には、大杉昭英先生(元文部科学省視学官)の並々ならぬご指導があったことと考えます。
冒頭の 3 分野共通の部分を紹介させて頂きます。
<開会行事>
○会長挨拶(竹原 眞 大会会長 (全中社研会長))
・新型コロナによる学校環境の変化、一人一台 ICT の普及、教師の技能の習得も必要。しかし、教育の不易である部分は変わらない。
・本大会の主題「グローバル化する社会を生き抜く生徒を育てる:「4つの力」と資質・能力の 3 つの柱の関係に注目した研究である。
・ハイブリッド型の開催、大会のオンデマンド化、年間指導計画のDVD化の大きな変更
・自身の経験として、全国大会は4回目。授業者、基調提案者、全中社会長として参加。その都度社会の大きな節目でもあった。新しい生活様式に即した今後の新しい大会の姿の出発点となるであろう。
・文科省、都教委、都中社のご協力・ご尽力に感謝申し上げる。
○実行委員長挨拶(佐藤 敏数 実行委員長(都中社研会長))
・ご参加いただいた講師、ご来賓に心より御礼申し上げる。
・コロナ禍の中で、中止や無観客開催も考えたが、できることを考え、アフターコロナの先駆けとなる大会として、今後の各地の大会の参考となるような大会にしたい。
具体的には
① 著名講師の講演をなくし、視学官・調査官の先生方の話をたくさん聞く「学ぶ大会」にする。
② 授業生徒の移動を伴わず、遠隔の先生も研究や授業に参加できるようにする。
③ オンデマンド型の配信により、公務で参加できない先生も参加可能、3分野すべてのお話を聞くことも可能。学びを深めることが可能。
・文科省、都教委、区教委をはじめ、すべての関係者に感謝申し上げる。
<基調提案> (田口 克敏 都中社研研究部長)
・教員の使命とは…生徒の能力・自立・資質を伸ばすこと
・中学校社会科教員としての使命は?
・VUCAな時代 社会は不確実性をもって変動している
※「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」
→人的資源が大切である日本の担い手となる生徒たちに、公民としての資質・能力を養い、社会参画の意識を高めていくことが欠かせない。
・過去の全国大会…「自分づくり・社会づくり」から一歩進めて
・「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力、人間性」の3つの資質・能力に加えて、「予測力」「対応力」「共生力」「発信力」を加えた。これらは、汎用的な資質能力である。
・資質・能力の3つの柱と「4つの力」をマトリックス化し、対応関係を作成した。
・OECDの「ラーニングコンパス」→Wellbeing(より良い社会・人生)に向かうように学習が構成されている。都中社研の研究とも類似している。
・社会科の目標と「4つの力」は一致している。日常の実践から導いたものが、学習指導要領とも軌を一にしていた。
・力マトリクス→目標マトリクス(分野で具体化)→評価マトリクス(単元でさらに具体化)の作成
・単元指導計画→デジタル配布。教員自身でのオリジナル化が可能。単元を貫く問い、単元で主に使う見方・考え方を入れている。どの「4つの力」の育成をねらっているかが表示されている。「学習改善に用いる評価」、「評定に用いる評価」をそれぞれ示している。評価マトリクスには、「評定に用いる評価」に関するもののみを示している。
・中学校社会科の目的は、社会的な見方・考え方を働かせ、「公民としての資質・能力の基礎」を育てることが最終目的である。三分野を総合した見方・考え方を発揮し、公民的分野のD2に取り組ませるため、中学校社会科として、各専門委員会は分野を超えて意識して取り組んだ。
・成果…グローバル化する社会を生き抜く4つの力をまとめられた
学習指導要領を踏まえた4つの力を育てる年間指導計画の作成
公民的分野D(2)を目指した分野を超えた連携が図られた
・課題…「4つの力」の合理性
今後の中学校社会科としての在り方をさらに考えていくこと
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