新型コロナウイルスの流行を受けて休止していた社会科学習会を、9月12日(土)に、5か月ぶりに再開いたしました。今回は、新型コロナウイルス予防のための学校一斉休校措置期間中に先生方が工夫された課題や遠隔授業などの実践を発表していただきました。発表者は江戸川区立上一色中学校の木村諭先生、福井県教育庁義務教育課指導主事(福井県東京事務所勤務)の吉川あき子先生、お茶の水女子大附属中学校の渡邊智紀先生でした。以下に概要を記します。
1.木村諭先生
(1)家庭学習の課題
4月に入り週一回程度の登校ができるようになってから家庭学習の課題を5回にわたりプリントで示した。4頁で3時間分程度の授業を想定した単元の配列とした。教材は教科書、ワークブック(公民)、他に参考動画として「NHK for School」を示した。また、質問教室をウェブ(Zoom)上で行った。また、学習の深化を図るために「プラスの課題」を提示するなどの工夫をした。
(2)WEB会議ソフトを活用した遠隔授業の実施について
これは「臨時休業にともなう自宅勤務を活用した業務レポート」として作成、提出したものにも記載したものである。東京都内の多くの公立学校では外部アクセスへの規制があり、今回のような事態に対応した遠隔授業が出来なかった。そこで、3年生へのアンケートで「塾などでZoomやyoutubeなどを活用したオンライン授業を受けたか」を問い、その評価を文章で尋ねた結果を見ると、56%の生徒が何らかの形で受講していた。この数値は注目すべきと考える。状況の変化に対応出来ず、規則や制度が…と言っている間に公立学校は遅れを取ってしまうことが如実に示されている。
オンライン授業に対する肯定的な評価として、①教師に見られていることによる緊張感、②質問がすぐできる、③わかりやすい・集中できるなどが挙げられていた。また、否定的な評価として接続が切れるや画像、音声が見にくい、聞きにくいなど技術的なものが見られた。家庭内での回線や機器の整備が背景として考えられる。
今後の遠隔授業の活用として①社会科の授業では、遠隔地(過疎地や海外など)と結んでリアルタイムで遠隔地の今を知ること、②不登校生徒への対応として、教室と特別支援教室や自宅を結ぶことなどが考えられる。
質疑の際に、玉川大学非常勤客員教授の高岡麻美先生から大学でオンライン授業を実施した状況、また同大学の学生さんからは受講生としての感想等も披露された。
最後に、東京都教育委員会が行った「令和2年度 オンライン推進に向けた研修」の資料が配布され、説明を頂いた。
2. 吉川あき子先生
(1)県内の公立小中高等学校の児童生徒に向けた遠隔授業
休校中の家庭学習支援のために、県教育委員会が教材を作成し、配信した。授業者は指導主事等の教育委員会職員、集録は福井ケーブルテレビが行った。配信は、①県のHP(パスワード付きの限定配信、所属学校HPからアクセス)、②福井ケーブルテレビ、③希望家庭に該当学年の授業DVD配布、再生機貸出の3つの方法を取った。
社会科の動画作成にあたっては、①各学年10分×6本→約2~5コマ分の授業を10分で実施、②資料については教科書の著作権の扱いが不明であったので使用せず、③撮影時間は9分40秒以内、限られた時間で多くの授業を集録するために編集作業ができないことから、途中停止はなく、1秒でも伸びると取り直しという厳しい条件での収録であった。
(2)質疑
文科省の全国学力調査で常に上位を占めていることで知られているため多くの質問が寄せられた。例えば思考力を身に付けさせるための工夫として、県独自の学力診断テストを行い、その分析と課題提示を教育委員会が行っている、また、副教材を県で作成し、長文の解答場面を設定している。幸福度が高い背景として、学力が高いという評価、雪国特有の体力や忍耐力、共働きと併せて3世代世帯の多さなど安定した家庭状況が考えられる。学力向上に向けた取組としてのひとり立ち学習などが挙げられる。
3.渡邊智紀先生
実際に遠隔授業として配信した動画を提示しながら報告がなされた。また、資料として「遠隔学習ならではの工夫をしながら探求的な学習(主体的な学び、深い学び)の実現」を目指した授業実践報告(未定稿)が配布された。
動画を使った授業では、最初は説明等が冗長になり、一コマが22分と長くなってしまった。次第に慣れてきたものの、一コマ10~15分程度の動画作成のために約1時間を要した。自宅での作業で時間的な制約がない中で、どのような資料を提示するのかの判断が難しかった。ノートの例示部分などは家庭でダウンロードできるようにした。
今回は休校中の対応としてであったがこれを日常の学習指導に転嫁させる工夫が必要と考える。また、予習はウェブを活用し家庭学習とし、授業では思考力を養うなど反転学習への契機となるだろう。現在、授業は再開されたがソーシャルデイスタンスを考慮して机を寄せての話し合い学習ができない。机は動かさず、身体の向きを変えての話し合いをさせている。
5か月ぶりという事で多くの皆様の参加を得て、大変活気のある会となりました。
次回は10月11日(日)に都内巡検を行います。詳細は次の記事で紹介します。
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