年末の第154回 社会科学習会は、令和元年12月21日(土)に牛込第一中学校で開催されました。今回は、新学習指導要領に対応した評価の在り方について、渡邊智紀先生(お茶の水女子大学附属中学校)の講演でした。以下に概要を記します。
1 評価の果たす役割
・カリキュラムマネジメントの視点(PDCAのサイクルのC)⇒カリキュラムを見直す手段
・学びを振り返る視点⇒教師&生徒が、自らの指導や学習の改善を図る手段
2 評価にまつわる課題
・事後評価に終始していないか?
・関心・意欲・態度の評価が難しい・・・挙手の回数、ノートの取り方など、行動の一面のみをとらえてないか? ⇒学習に対する「粘り強さと自己調整」を見る
・教師によって方法や重みが異なる・・・社会人・大学生・高校生からのヒアリングの声
・教師の働き方改革との関係・・・記録・整理・集約=負担感 ⇒慣例的に行われてきたものも見直しを図ることも必要(例:定期テストの是非、いつも100点満点の試験でよい?)
<小括> 【評価方法の改善のねらい】
①生徒=学習改善 ②教師=指導改善 ③カリキュラムの見直し
(参考)平成31年3月29日 文部科学省「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」
3 新しい評価(4観点 ⇒ 3観点)の方向性と評価方法
○知識・技能・・・他の学習や生活の場面でも活用できる程度に概念等を理解したり、技能を習得したりしているか(平成31年1月21日 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」)
⇒ 授業で扱ったことと視点・資料をかえても活用できるか。
※ ペーパーテスト等の工夫(中卒認定試験や高校入試等の良問の活用)も視野に。
○思考力・判断力・表現力・・・知識及び技能を活用して課題を解決する等のために必要な思考力・判断力・表現力等を身に付けているか(報告)
⇒ 新たな情報と既存の知識を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決したり、考えを形成したり、新たな価値を創造していくために必要となる思考。
⇒ 必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
⇒ 伝える相手や状況に応じた表現 (例:地図の活用、プレゼンなど)ができることが重要
(以上、平成28年12月21日 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を参照されたい)
※ 具体的な評価方法の例・・・論述やレポート、発表、グループでの話合い、作品の制作や表現等の多様な活動、それらを集めたポートフォリオを活用 など
○学びに向かう力、人間性等
①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価を通じて見取ることができる部分
・知識及び技能を獲得したり、思考力・判断力・表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行うとする側面
・粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面
⇒ ノートやレポート等の記述、授業中の発言、教師による行動観察、生徒による自己評価や相互評価などを活用し、発達段階や個性を十分に考慮しながら、他の観点の状況を踏まえた上で評価。
② 観点別評価や評定になじまず個人内評価を通じて見取る部分
⇒ 声掛け、励まし、アドバイス
※ これらができる時間を確保する工夫(例:授業中に作業時間を設定する、机間指導を充実させる等)を。
4 評価情報の生徒との共有、評価の頻度
・どのような方針によって評価を行うのか事前に示し、共有することの重要性
⇒ 評価の妥当性・信頼性を高める
⇒ 生徒に教科において身に付けるべき資質・能力の具体的なイメージを持たせる
⇒ 生徒に自らの学習の見通しをもたせ自己の学習の調整を図るきっかけとなる
・評価の頻度
⇒ 日々の授業・・・「学習改善につなげる評価」(形成的評価)をしっかりと。
⇒ 単元や題材等の内容のまとまりの中で、それぞれの実現状況が把握できる段階で「評定に用いる評価」を実施
※ イメージとしては、まずは指導して、「学習改善につなげる評価」を行いながら資質・能力を育成し、ある程度習熟が進んだ段階の力をもって「評定につなげる評価」を行う。
以降は、11月中旬に行われた「小学校及び中学校各教科等教育課程研究協議会資料」の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(小学校、中学校)のうち「第3編 単元ごとの評価について(事例)【案】を用いて説明と意見交換が行われました。
(注:リンク先は愛媛県教育委員会ホームページ(https://www.esnet.ed.jp/ehime-c/)より)
その中で、評価を評定に総括する方法を学校で決めることにより学校間の格差が生じていることや、評価・評定が高校進学の資料とされていることから生じる問題、学びに向かう力、人間性等の評価の予想される困難さなどについて意見交換が行われました
最後に、既出の資料のほか、評価の改善に関して一読すべき資料が示されました。
(参考資料)
平成 29 年7月 文部科学省「小学校学習指導要領解説 総則編」(34~37 ページ)
平成 29 年7月 文部科学省「中学校学習指導要領解説 総則編」(34~40ページ)
令和元年6月 国立教育政策研究所「学習評価の在り方ハンドブック」(小・中学校編)
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