第142回 社会科学習会の報告

 第142回社会科学習会は、11月17日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開催されました。今回は、11月8日~9日に徳島市で開催された全中社研徳島大会の様子と地理的分野の発表の報告を藤田淳先生(港区立高松中学校)からお聞きしました。併せて、前日に宇都宮市で開催された関ブロ大会の報告を峯岸会長が行いました。以下は、藤田先生の発表要旨です。


1 研究骨子

 →「社会的認識力」と「社会的判断力」を身に付けさせる。

  「社会的認識力」:社会的事象の理解・社会的事象と社会的事象の関係

            社会的事象の意味・意義の認識

   →身に付けさせる授業を「Ⅰ型」と分類。

  「社会的判断力」:社会的事象に対する考えの形成(価値観の形成)

            多様な意見からの合意形成

   →身に付けさせる授業を「Ⅱ型」と分類。

※「社会的認識力」が身に付かなければ、「社会的判断力」は身に付かない。

※Ⅱ型の授業では「トゥールミン・モデル」を活用。


2 徳島大会地理的分野の公開授業に関して

公開授業1:ヨーロッパ州~国家統合に注目して~(全8時間 公開は8/8)

・単元を貫く問い「EUを通して見たヨーロッパ州とは、どのような地域だろうか」

・第1次から第6次までで、「単元を貫く問い」に対応する授業(Ⅰ型の授業)

・第7次、第8次でⅡ型の授業。

本時の問い「EU大統領として、イギリスのEU離脱後もEUは1つの国として統合を目指すべきか」


公開授業2:「中国・四国地方」~他地域との結び付きに注目して~(公開は8/8時間)

・単元を貫く問い「交通網の整備を通して見た中国・四国地方はどのような地域だろうか」

・第1次から第6次までで、「単元を貫く問い」に対応する授業(Ⅰ型の授業)

・第7次、第8次でⅡ型の授業。

本時の問い「『四国新幹線』の開通によって、中国・四国地方の産業は発展するだろうか」

※両授業での共通点

 当初提示してあった資料で一度価値判断をさせた。その後本時中に新たな資料を提示す

ことで生徒の思考を揺さぶり、再度の価値判断を行った。

公開授業1:「マケドニアのEU加盟問題」→国家のアイデンティティに関わる価値提示。

      「アメリカのCEOの話」→移民の利点の価値提示。

公開授業2:「ゲストティーチャー」→徳島県内で企業経営をしていて、四国新幹線を応援する立場の方。大きな大阪経済圏という価値提示。


※両授業への質疑

公開授業1 ・Ⅱ型の授業が年間2本で「社会的判断力」は身に付くのか。

      ・年間指導計画でⅠ型とⅡ型はどのようにつながっているのか。

      ・資料提示のやり方は良かったか。

      ・4人班などのグループ活動が無かったのはなぜか。

公開授業2 ・ゲストティーチャーの使い方は良かったか。

      ・なぜ新幹線を題材としたのか。


※指導助言に関して~鳴門教育大学准教授 伊藤直之先生

・「社会的判断力」を育むためには→「判断」させていくしかない。

・今回の授業は地理だったか→「地域」を扱っているので地理でよいであろう。

 地域統合のあり方:政治地理/産業振興のあり方:経済地理

・Ⅱ型授業のタブー→教師による価値の注入。

・トゥールミン・モデルのメリット→主張の根拠の明示/価値判断の論理などを吟味可

                →記入のプロセスと思考のプロセスは逆であろう。

・今後の地理学習に関して・・・「○○的判断力」(コンピテンシー)育成をめざすなら、地理(地誌)の系統性・地域性は崩れる

→選択肢

 ①地理ならではの地理的価値判断(立地・環境)

 ②地理に適した社会的価値判断(政治・経済)

 ③総合社会科としての社会的価値判断

 ④道徳などを含めた生き方としての価値判断


3 文科省視学官 濵野 清先生の講演から

 地理的分野各中項目の留意事項


4 都中社研地理専門委員会の発表

①研究主題

「グローバル社会を生き抜くこれからの生徒を育てる社会科学習」

→変化が激しく予測が困難な時代で、将来起こりうる事態を予測し社会の変化に対して柔軟にたくましく生き抜く力の育成を目指す。

<都中社研が生徒に身に付けさせたい力として考える「4つの力」>

・予測力 社会的事象についての意味や意義などを資料などから適切に読み取り、分析し予測・判断する力。

・対応力  社会的事象についての課題などを発見・把握し、適切に判断して課題を解決する力。

・共生力 異なる文化や世代間の違いなど多様な人々と関わり、受容し、共生していく力。

発信力 よりよい社会づくりに向けての提言等を他者や社会に対して様々な手段や方法を用いながら発信する力。

  

②地理専門委員会の研究

「持続可能な開発のための教育(ESD)」の視点を取り入れた地理的分野の学習指導

→学習対象となる地域の地域的特色を捉える中で、地域の良さの伸長や課題の解決を、地域の人々の立場に立って主体的に考え、持続的に発展していく地域の将来像を考える学習。

 

③実践事例 中野区立第七中学校 主幹教諭 千葉一晶先生

単元名:「アジア州」(全8時間 実践事例は8/8)

・単元を貫く問い:「なぜアジア州は急激な経済成長とげたのか」

・本時の課題「中国の経済発展は進めるべきか、緩めるべきか」

社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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