市川方面巡検(第140回 学習会)の報告

 第140回社会科学習会は、9月16日(日)に千葉県市川市の北国分寺駅からスタートしました。今年度は、昨年のリベンジということで市川市のなし農園などを訪問しました。市川のなし栽培のルーツを探るべく市川市歴史博物館にて見学を行った後に、市川市のなし農園“時長園”さんを訪問させていただきました。以下に巡検の概要を記します。

1.市川市の産業の歴史

 市川市におけるなし栽培の歴史は古く今から約290年前の江戸時代から始まったそうです。市川市は、地理的にも江戸に近いことから幕府の直轄領でありました。また、江戸川沿いにかけて船での交通網ができていたことから宿場町としても栄えていたそうです。市川市になしをもたらしたのは、川上喜六という寺子屋の師匠をしていた人物でした。喜六は貧しい農民を救うためは殖産興業に取り組み特産品を作るべきだと考えました。そこで市川になしの栽培が適していることを知り美濃国よりなしの枝を持ち帰り栽培を始めたそうです。徐々にその栽培の波が広がり市川市だけでなく松戸市などにも波及していきました。また、江戸周辺にはなしの栽培をしている地域がなかったこともあり江戸での評判はよかったそうです。

『市川の梨』発行:市川市 編集市民経済部 農政課 より


(出典)http://book.geocities.jp/hf2929/92edomeisyo/9220/sub9220.html(「酔いどれ親父のDataFiles」様より)

 他にも、市川市は古くから塩の生産も行われておりいまでも市川塩浜としてその地名が残っています。


2.時長園さんのなし栽培

 今回は、なし農園“時長園”さんを訪問させていただき、園の方とJA市川の松崎さんからお話を伺いました。時長園さんでは主に三品種を栽培しているそうです。

 一つ目は、果汁が多く甘みが強い「幸水」。

 二つ目は幸水より甘みが強く程よい酸味のある「豊水」。

 三つ目は新高と豊水を掛け合わせた品種の「あきづき」です。

 新高の栽培を行っている農園さんはあるそうですが新高は暑さに弱く近年の気温上昇の影響をうけ出荷できる数が限られてしまうそうです。そのため、時長園さんでは新高をあきづきに切り替えて栽培を行っているそうです。

お土産に時長園さんのあきづきを頂きました!柔らかい触感と甘さがとてもおいしいなしでした。ありがとうございました。


3.市川梨の出荷実績

 市川市では特に幸水の出荷が多く、平成29年度の出荷数は33924.2kgだそうです。販売額にして約一億円になるそうです。次いで豊水、新高、あきづきの順に出荷されています。新高は時長園さんのように取り扱いをやめた農園さんもあり徐々に減少傾向にあり代わってあきづきが出荷数を伸ばしています。しかし、なし農家さんの中には新高を慕ってくれるシニア層に向けて出荷を続けているところもあるそうです。

 市川市は東京に近いこともあり東京の市場へ向けての出荷がやはり多くなっています。しかし、市場への出荷は全体の約3割ほどだといいます。残りの7割はなんと直売で売られているそうです。市川市の梨街道沿いは農園さんだけでなく直売所としても機能しており時長園さんに向かう途中にもたくさんの直売所を見ました。また、東京だけでなく松戸や柏といった消費地に近いこともありぎりぎりまで寝かすことができよりおいしいなしに仕上がるそうです。江戸時代から現在に至るまで市川の梨は評価されていることがよくわかります。


4.市川なし栽培のQ&A 時長園さんにお伺いしました

Q なし農家さんの一年のお仕事はどのようになっているのですか?

A 4月から7月にかけてはよりおいしいなしを作るために摘果や草刈りなどを行います。8月から9月にかけて梨が旬を迎えるのでこの時期に収穫します。10月からは翌年の梨づくりの準備のために土づくりや余分な枝を切ったり上に伸びすぎたりしないようにする整枝剪定を行います。

Q 一年を通して収穫時期など忙しい時にはどうしていますか?

A アルバイトさんをやとって収穫などを手伝ってもらいます。しかし、整枝や剪定には技術が必要なので近くの農園さんが自分のとこを終わらせてから手伝いに来てくれます。

Q 農園の中に上に伸びた大きい木がありましたがあれも梨の木ですか?

A そうです。実は梨は自分の花粉では受粉ができない性質があります。そこで、受粉用にほかの品種の木を残して置きます。

5.おわりに

 全国的に見てもなし栽培の盛んな千葉県ですがそのルーツをたどっていくと市川市にありました。おいしい市川のなしの背景には先人たちの努力や消費地に近いという地理的条件など様々な要因がかかわっていることがよくわかりました。また、市川のなし農家さんは若手の方も多く農薬の講習会などにも意欲的に参加される方が多いそうです。地域の特産品を誇りに思うと同時に守っていこうという姿勢の表れではないかと大変感銘をうけました。

社会科学習会ホームページ

東京都の中学校社会科(若手)教員の指導力アップを目的として,社会科の指導法や教材開発などの学習を進めている団体です。 毎月1回定例で学習会を開催し,毎年10月頃には巡検も実施しています。興味をお持ちの方はぜひご参加下さい!