巷は文化祭シーズンに突入している時期でしたが、来月の学習会(巡検)に向けて地形図を使った事前学習を行いました。(参加できなかった方は、このページで一度おさらいいただければと思います。)
講師は、本会顧問の高山昌之先生です。
高山先生は、元全国中学校社会科教育研究会会長(昭和61年度~63年度)、東京都教育庁指導部主任指導主事(調布市教育委員会指導室長)等を歴任された、社会科・地理の大家でいらっしゃいます。久々に学習会にお越しくださいました。
今回使用した地図は、2万5千分の1地形図「沼田」「猿ヶ京」です。
ところで、地図の図葉名の下にあるNJ-54-…という番号の意味を知っていますか?という問いから、今回の地形図学習はスタートしました。
(こういった情報も、知っておくとなにかと役立ちます。この地形図番号の意味については、こちら(佐世保高専HP)がわかりやすいのでご参照下さい。)
社会科教員は普段から目にしている地形図だと思いますが、改めて地形図の基本のき から丁寧に、かつ分かりやすく高山先生はご指導くださいました。
今回の巡検ルートは、「猿ヶ京」と「沼田」を重ね合わせると一つにつながって見えます。以前の地形図とは違い、現在の地形図には、地形図の重複部分があります(オレンジの△マークの外側部分)。ちなみに、下の写真の北西から南東に(17)と書かれた国道17号(バイパス)が通っていますが、地図の中央部にある「小川島」の島の字の左側に記念碑の地図記号が見えます。ここが最初に訪れる名胡桃城址です。
上毛高原駅からの巡検ルートを確認し、目的地周辺の地図記号、標高や比高を読み取っています。
今回のルートは、上毛高原駅から国道291を南下、月夜野を経て、国道17号に入ります。国道17号を東進し、内野の集落から小川島に向けて北上し「名胡桃城址」に至ります。地形図上では、「城址」ではなく「石碑」で表示されています。再び、国道17号に戻り、月夜野大橋を渡り利根川沿いに南下し沼田市に入り、JR上越線を超えて沼田公園に至ります。この沼田公園が「沼田城址」で「城址」の記号で表示されています。また、ここには三角点が置かれ、標高は海抜417mです。JR上越線の沼田駅周辺は海抜331mですから、段丘の下と上で86mの差があります。実際の光景が楽しみです。ここまでの道筋を色で記しました。
今回の巡検の見どころは、河岸段丘です。沼田の地形図の薄根川、利根川、片品川で囲まれた沼田市周辺が河岸段丘の上段に当たります。 それぞれの河川に面した等高線の混んだ場所が「段丘崖」と呼ばれます。「上越線」の表記の「越」の文字の辺りや沼須町の北、標高397mの辺りなどが顕著な例です。段丘崖の崖線を薄く茶色で着色しました。
次に、沼田城、沼田市街地の成り立ちや特色を、地形図からとらえました。「沼田公園」が沼田城址となります。その城下町である南東には倉内(武家地)の地名が見られ、その外側には鍛冶町、馬喰町、材木町などの町人地が見られ、職種ごとの地割が行われたことが読み取れます。また、馬喰町と坊新田町のあたりには、寺町が形成されています。
ところで、上毛高原駅から月夜野大橋にかけては、「桑畑」の記号が読み取れます。また、片品川の西方の赤城山麓は短冊形の耕地が広がり「畑地」の記号が読み取れます。何が栽培されているのでしょうか。現地で確認してきたいところです。
下は、今回紹介いただいた資料と、その元となった「地図に親しもう」(編:国土地理協会)です。古い本で現在は絶版だそうですが、地形とその地形が典型的な地形図が紹介されています。今回巡検で訪れる沼田の河岸段丘もその一つです。
学習の後の質疑では、地形図指導をどの場面で行うか?という意見交換が行われました。身近な地域はもちろんのこと、校外学習や防災の単元、歴史的分野での新旧比較などさまざまな活用場面があげられ、地形図の活用についての認識の幅を広げることができたように思います。
高山先生、ありがとうございました。
なお、会の冒頭で峯岸会長より
1)10月巡検~12月例会の予定
2)中教審の社会・地理歴史・公民ワーキンググループの審議とりまとめが発表されたこと
についてお話がありました。
特に2)については、小学校から高校までの社会科系教科のつながりを理解しておくことが重要になるとのお話でした。また、新しい学習指導要領のもととなる「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」も発表されています。どちらもリンクからご覧いただけますので、一度ご覧ください。
※当日は地形図(沼田、猿ヶ京)の他、方位磁石、カメラ等をお忘れなく。
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