第157回学習会の報告(会員の実践発表)

 第157回社会科学習会は、令和2年3月14日(土)に新宿区立四谷地域センターで開催されました。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止対策ですべての学校が休校中でしたので、開催については思案しました。参加者は不特定多数ではなく、それぞれで十分な予防と対策について見識を持っているということを考え開催に至りました。ただ、牛込第一中学校が休校中でしたので急遽、会場の変更を行いました。今回は、会員の実践発表で近藤沙耶香先生と木村諭先生にお話しいただきました。

1 近藤紗耶香先生(江戸川区立小岩第五中学校)の実践発表

 東京教師道場における2018年度~2019年度の2年間の研修の成果を発表された。

(1) 研修の経過

 第1・2期のテーマは「主体的に思考・判断・表現するための学習課題と教材研究」とし、第1期は「現代社会の見方や考え方(公民的分野)」を扱った。教材として特別活動の内容である「進路」、「修学旅行(景観づくり)」、「学級活動(給食当番)」を取り上げ、教科横断的な学習課題として「きまりの意義」を設定した。多面的・多角的な視点から考察させることはできたが、「対立と合意」、「公立と公正」という視点が十分に生かせなかった。

 第2期は、「近代の日本と世界~二つの大戦と日本~(歴史的分野)」を扱い、学習方法として生徒の話し合いや発表を取り入れた授業を行った。学習内容を多面的に捉えさせるためにマインドマップを用い、政治・外交・文化の面から、戦争につながる要因を生徒自身で整理させた。その後、グループで話し合わせ、一番の要因を決めさせ、その理由を説明させた。各班の発表が多岐にわたり、討論の状況が評価しにくいものになった。生徒に身に付けさせたい力を明確にして、それに対応する単元の指導計画を立て、授業内容を精選する必要が課題となった。

(2) 第3期の実践報告

 第3期のテーマは「単元を貫く学習課題の設定と評価の計画」とし、単元の指導計画を作成した。「日本の諸地域―関東地方―」の単元を貫く学習課題として「関東地方の魅力と弱点は何か」を設定した。首都東京を含む大都市地域としての魅力を捉えさせ、弱点を「防災」の視点から考察させ、対策を考えさせた。

 「主体的・対話的で深い学び」を具現化するために、「知識構成型ジグソー法」を用いた。評価については、学習活動に向かう生徒の活動状況から「関心・意欲・態度」の評価規準と最後のまとめのワークシートの記述内容から「思考・判断・表現」の評価規準を意識し、評価場面では具体的な判断基準を生徒に明示した。

 この授業実践を通して、教師が生徒の視点に立って、資料や教材、学習形態を工夫すれば「主体的・対話的で深い学び」が実現できることを実感できた。残された課題として、ここで用いた「知識構成型ジグソー法」の手法への教師の理解が指摘された。第3期の検証授業は当会会員の泉宮一喜先生(渋谷区立笹塚中学校)が担当された。

 近藤先生は、単元を貫く学習課題として「関東地方は自然災害にどう備えるべきか?」を設定し、第3時の実践を報告された。教材として、前日の給食で使われた農産物を取り上げた。それを通して関東地方の農業の特色を理解させ、台風19号の影響を考えさせた。

(3)質疑

 「マインドマップ」の扱い、「個人学習→グループ学習」に適した学習内容、年間指導計画の配当時数、関東地方の学習指導要領の扱いとの関係、板書の必要性など様々な意見交換が行われた。

2 木村諭先生(江戸川区立上一色中学校)の実践発表

 「公民的分野研究会」で研究、日本社会教育学会で発表された指導案(2019年 新潟大会、発表者;中央区立銀座中学校 種藤先生、葛飾区立亀有中学校 詰田先生)を自身で改善、実践された成果を発表された。

(1) 研究主題と仮説

 主題を「主権者として主体的に課題を解決しようとする生徒の育成」とし、仮説のキーワードとして「当事者意識」、「切実性」、「主体性」を示した。

 学習過程として、①「学習課題の発見(をつくる)、そのための資料の提示」、②課題の追究(=調査)」、③追究した課題についての話し合い(他の人の意見を取り入れる)④課題の解決を考え、構想する。の手順を追った。

(2) 授業実践

① 第1時:単元「地方自治と私たち」課題の説明、「江戸川区に関する意識調査アンケート(生徒・保護者)」を実施、配布する。

② 第2時:「江戸川区に関する意識調査アンケート」結果の説明。ワークシート「区長になろう」を配布。この後、政党名や区長候補を決め、公約・選挙ポスター・たすきを作ることを説明する。

③ 第3・4時:選挙公報・ポスター、演説原稿の下書き、点検、清書、演説の練習

④ 第5時:立会演説会・投票

※ 「江戸川区に関する意識調査アンケート」は実際に行われているものを使用した。

(3)質疑

 公約にあまり差が出なかったのはなぜか、請願権の行使を考えても良いのではないか、立候補者に男子が多いのはなぜか、2年(身近な地域)の学習と関連性を持たせる工夫も必要ではないかなど様々な意見交換が行われた。

3 実践発表を振り返って

 実践発表と意見交換は学習会に求められる重要な事柄と考えます。本年度は、1月の小坂先生と併せて3名の先生方の実践報告を頂きました。また、各発表の後の質疑も大変、多岐で質的に深いものとなりました。

 なお、日本社会科教育学会への入会は紹介者を必要としない開かれた学会です。是非、ご入会下さい。詳細はホームページをご覧ください。

また、当学習会で学んでいる、3月に玉川大学を卒業する3名が、4月から教壇に立ちます。新天地へ異動される方も複数いらっしゃいました。それぞれの場所でのご活躍をお祈り申し上げます。

社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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