第141回社会科学習会は、10月20日(土)に新宿区立牛込第一中学校で開催されました。今回は、専修大学特任教授の齋藤博志先生に、新学習指導要領の歴史的分野についてお話しいただきました。ご講演内容は、授業の展開について、新しい学習指導要領の歴史分野の解説、それをふまえての単元の構造化と焦点化についてお話しいただきました。
1.授業の展開について
若手教員に話を聞くと、教科書を教えていくと時間が足りない、という声がきかれる。教科書は多くの情報が盛り込まれ、どんどん厚くなってきている。そのため、教師は中心教材を何にするのかを考え、単元の構造化と焦点化をはかることが必要である。
授業の展開は、次のように行われる。
・導入部 本時の学習課題を明示する
・展開 生徒が活動を通して、本時の学習課題に迫る
(知識・技能、思考・判断・表現力、学びに向かう力 等を習得する)
・まとめ 学習課題(の解)を明らかにする
最近、2つの区の研究授業を見たが、①ゴールにたどり着かない、②授業の途中でゴールの先に行ってしまう、という課題が見られた。授業において、自分が分設定したゴールに生徒を導くことが重要である。
2.新しい学習指導要領の歴史的分野の解説
改訂の概要は以下の通りである。
・履修形態は変わらず(1・2年は、地理的分野の並行学習、3年は歴史を学習した後に公民的分野へ)
・歴史的分野の配当時間が5時間増えた。→135単位時間へ(世界史の内容増に対応して)
・「単元」のまとまりを見通した指導計画を⇒「主体的・対話的で深い学び」を行うために
これをふまえて、
① 「世界史が増えた」分をどのように指導するか
② 「単元のまとまりを見通した指導計画」のために単元を貫く課題をつくること
③ 三つの資質能力を踏まえた評価
を今後考えていく必要がある。
また、歴史的分野の改訂の要点(5点)も記す。エ)が18歳選挙権の導入から重視される。
【歴史的分野の改訂の要点】
ア)歴史についての考察する力や説明する力の育成の一層の重視
イ)歴史的分野の学習の構造化と焦点化
ウ)我が国の歴史の背景となる世界の歴史の扱いの一層の充実
エ)主権者の育成という観点から、民主政治の来歴や人権思想の広がりなどについての学習の充実
オ)様々な伝統や文化の学習内容の充実
3.構造化と焦点化
構造化と焦点化とは、ある単元のどの部分が重要かを自分の中で明確にする作業である。若い教師、あるいは社会科を専門とせず社会科を教えなければならない教師には難しい。以下では「構造化」の方法として、学習指導要領の内容を図式化する方法と、焦点化するために「中心教材」を設定することを示す。
【構造化】
構造化とは、単元展開の見通しを図式化し、見通しの明確化を図ることである。授業の流れの有機的な展開を図るための、見通しの図式化(=構造図)を行う方法は以下の通りである。
① 学習指導要領では、「○○、○○などを通して、AがBであったことを理解させる」というように、文章で学習内容の構造化が図られている。
② これを、「欧米における近代社会の成立とアジア諸国の動き」を例にとると、以下のような構造があることが分かる。
「アの事項の<A市民革命:アメリカ独立>を基に、イの事項<C工業化の進展や政治や社会の変化>に着目して<D近代社会の変化の様子を多面的・多角的>に考察し表現することを行い、アの事項の<B欧米における近代社会の成立とアジア諸国の動き>を理解する」
③ さらにこれを図にすると次のようになる。
【焦点化】
焦点化とは、どの内容を中心にし、どのような指導を進めるかを考えることである。そのために、単元の核となるような「中心教材」を据える必要がある。この範疇から漏れるものは扱わないということもあり得る。
「中心教材」の条件は次のようなものである。
<中心教材とは・・・>
・その時期の中核となる事柄を端的に表すもの
・問題提起ができ、しかも発展性に富んだもの
・生徒に把握しやすいもの 等の条件が考えられる
指導案の例として、「満蒙開拓青少年義勇軍」を挙げる。また例えば、単元と中心教材の例として、「明治維新⇒五箇条のご誓文」、「議会政治の確立⇒自由民権運動」、「国際的地位の向上⇒条約改正」などがある。
4.社会科教師として
最後に社会科教師のあり方として、以下の言葉をいただいた。
<社会科教師として>
〇内容教科として、生徒に基礎的・基本的な知識・技能を習得させて、それを活用する機会を増やし、生徒の思考力・判断力・表現力を育成・向上させていきましょう。
〇社会の課題を自ら気付き、考えられるような学びに向かう力の育成を教師が意識して行っていきましょう。
〇社会科教師は、中学校教育の中核を担う教科の指導者としての誇りと自負をもって授業に臨みましょう!
(記録 足立区立中学校 K先生)
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