第184回学習会の報告

 第184回社会科学習会は、令和5年9月9日(土)に新宿区立牛込第一中学校において会員の実践発表が行われました。今回は、東村山市立東村山第二中学校の藤田淳先生に地理的分野大項目Bの中項目(1)の内容にあたる「世界の人々の生活と環境」の授業実践を発表していただきました。

 藤田淳先生は、昨年度まで東京都中学校社会科教育研究会の地理専門委員長を務められてきました。本年度から研究部副部長を務められ、地理教育、社会科教育についての研究を深められてきました。

 地理的な見方・考え方を働かせ、課題を追究し、世界各地の人々の生活やその地域の特色などを理解する学習についての実践を発表していただきました。以下に実践発表の要旨を紹介いたします。

【藤田先生と東村山市について】

 藤田先生は、練馬区の大泉第二中学校、港区の高松中学校を経て、現在は700人規模のマンモス校で勤務しています。東村山市は多摩全生園八国山緑地豊島屋酒造ポールスタアソースなどがあります。また、志村けんの出身地であり、久米川合戦古戦場や元弘の碑など歴史的な名所もあります。さらに、国宝である正福寺地蔵堂もあり、現在は西武新宿線の高架化に伴う新たな街づくりが進められています。

【授業実践について~世界の人々の生活と環境~】

この授業では、「場所」や「人間と自然の相互依存関係」の視点から考えることを重視し、また、資料や雨温図の読み方を学びつつ、地球的課題への意識を高めることや学んだことを「自分事」にすることを目標としました。

 1時間目では「人々の生活はどう決まるか」というテーマで、温帯を例に雨温図の読み方を学び、日本を事例に取り上げ、生活の様子について考えさせました。そして、「気候」から生活が決まるという仮説を立てさせ、のちの授業を通して検証していきました。2時間目~5時間目は「暑い」「寒い」「乾燥&高地」の各地域での暮らしについて雨温図から予想し、確認します。その後、「宗教」や「科学技術」が生活に与える影響について学び、決して自然環境だけでその地域の生活様式が決まるわけではないということを確認しました。

 6時間目には、人々の生活・環境を「未来予測」の視点から考えさせました。温暖化が進むと生活はどう変わるか、そして、最後に「人類の取り組み次第で未来は変えられる」ということを認識させ、学習した内容を「自分事」としてとらえさせました。

 7時間目に仮説の検証(まとめ)を行い、これまでの授業を踏まえ,単元を貫く問いに対する最終意見を書かせました(ミニレポート)。

【単元の評価について】  

 ワークシートの知識・技能を評価する項目では、仮説に対応する「世界の人々の生活はどのようなもので決まるか」を書かせ、概念的知識を見取り、「理由」部分では、事象を関連付けて説明しているかどうか(思考)を見取りました。

【質疑応答・意見感想等】

 評価について、藤田先生の方から知識・技能を見る項目で概念的理解をできていれば「B」評価、そう考えた理由を説明する項目でも個別的知識が誤りなく使われていれば「A」という考え方はどうかという提案がなされました。これに対して会場からは、「知識・技能のA評価について→概念を構成する個別的知識が複数ある場合、どの程度用いられているかでも評価は可能かもしれない。また、知識と思考を一緒にみることも考えられる」という意見や、「質的な段階の違いで評価すると考えた時には、どのように判断すればよいか?」という質問が出されました。また、評価については「公正性や個人内評価についても意識を持っておきたい。授業者が学習指導要領に基づく基準を作ること(目標に準拠した変化)が大切ではないか」という意見がありました。

 評価以外にも、「学びの共同体の意識をもつ=当事者意識を教育に携わる者(教師、保護者、地域など)が皆持つことが必要。教師の立場では、「授業を自分が作る」という意識を持つことが大切であろう」などの意見が出され、教師が授業づくりや評価について専門家として工夫・努力することの大切さを再確認しました。

 授業については、全体的な感想としてとてもレベルの高い授業という内容が多く、その中で「仮説・検証」を取り入れたことで新たな視点が出てきたかどうか、また「予想」という言葉で考えさせたらもっと簡単に考えられたかどうかなどの意見も出されました。

社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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