第 182 回学習会の報告(2)

ディスカッション2:「社会科(教育)に求められていることは?」

【中野さん】

・教えるから学ぶへの変化、教師主体から生徒主体への変化の過渡期のとらえ

・個別最適な学び、探究的な学びが求められている

 ⇒授業を実践してみた(工業・農業立地の概念を「地理の公式」として見出す展開)

・支援が必要な生徒が明確になる(端末や情報収集スキル、仲間づくりなど)

・評価が難しく感じた。教員自身がもつ評価の「枠」を批判的に見直し(批判的リフレクション)ていくことが必要である

・端末の利活用+思考ツールなどの仕掛けも必要。

★社会科は「内容教科」から「探究教科」へ変化する必要があるのではないか。

・教科縦断(小~高)の視点ももっと考えるべき。

・生徒が新しい課題を発見していく力を発揮している。

【大杉さん】

★判断に関わる「見方・考え方」の不足を補うべき。

・わかる→よりよい判断ができる これまでの社会科の伝統的な考え方

・社会をわかる過程についての見方・考え方は十分記載されているが、「判断」については?

 ⇔道徳などには正義などがある

・「わかる」ことと、「よりよく判断する」ことは別次元、架橋できない(ケルゼン;高校の倫理には登場している)

 例)台風で野菜価格が高騰というけれど、実際には価格高騰時には小さいものや形の悪いものも出荷させるよう農協等では指導している。

 ⇒家計にとっては〇、農家にとっては△、立場が変わると本当に良いと言えるのか?

・CS は最低基準→いろいろな価値判断の指導法の工夫、実践を(中立性を担保しつつ)

【岡崎さん】

★金融教育でも、主体的・対話的な学びを。様々な実践事例もある。

→金融機関の働きに留意して企業(会社をつくってみる)実践や中学生が模擬起業体験するなど、学校内だけでも完結できる。外につながることももちろん可能(地元とつながった実践もある)

※仮想の技術を使い起業の実践、その経験を生かした社会の課題解決を図る実践もあった

※起業を考えることを通してコミュニケーション能力や企画力、交渉力なども育成できる。

※ライフイベントシミュレーション→対応方法の考察によって、家計の収支結果が変わる

→ゲーム的要素を取り入れ、我が事として考えることで、社会でも役立つ深い学びになっているようである。生徒も教師もどちらにとってもよい授業になる。

【質疑応答】

・金城:判断の基準を公教育で示すことの危うさもあるのではないか?責任をもつということが大切なのではないか。

・大杉:判断の根拠を示す責任をもつことは前提となっている。ジレンマ問題など、正しさの背景にある考え方、正しさの規準、その基準を採用した理由を議論して、集団の中で価値を構築していくことが大切である。

 例)かわいそうという感情+背景にある「貧困はよくない(正義)という考え方」

 →それぞれの主張の背景を共有し、理解することが大切。教師が、そのような背景の枠組みを意識して授業をつくれるかどうか。

・吉川: 探究する中での悩みをどう解決しているか。

・中野:やってみて、それで出てきた課題について考え…と、やり続けていくことが必要。

・吉川:社会科の見方・考え方を働かせたり、価値判断をさせたりする授業を実践する先生へのアドバイスのポイントは?

・大杉:地域の産業の発展については、思考実験を伴う論争問題と考える。論点を明確にし、判断の基準を鍛えることが可能ではないか。「(自然条件、社会条件はあるが)この地域はこうあるべきだ」という意見の背景にある見方・考え方を大切にする。とすると、地理にもそのような見方・考え方を追加する必要もあるかもしれない。

・今川:「批判的リフレクション」とは?

・中野:教師自身にある「○○はこうあるべき」を違う見方で見て、今までの価値観を打ち破ろうとすること。


ディスカッション3:「これからの教員に求められること」

【大杉さん】

①問いの違いを意識して授業を構成できる教員

②粘り強く答えを見出そうとする意欲を育てる教員 非認知能力

③国際的な教育改革の潮流を意識した(管理職)教員

 →H20年版以降のCSの根底にあるのは、「キーコンピテンシー」(資質・能力)

④2030 年に必要な知識、コンピテンシーを理解して授業をする・作る力

 例)

 別の文脈で使える知識・技能

 エピステミックな(見方・考え方のように、実生活上の課題と結び付けて活用できる)知識

 エージェンシー…新しいものに心を開く、対立やジレンマと立ち向かい、調整する力

 責任ある行動をする力(何をすべきだったか、行動はどうだったかなど)

・インターナショナルで議論されている背景を知ることは大切。

【岡崎さん】

・生徒にとって身近なテーマの設定の工夫を。

・対話を通して主体的に参加できる学びの実現を。

・他教科の学習内容の確認、他教科との連携を。

・外部資源(人材、資金、技術等)の活用を。

 →生活や社会の課題を解決しようとする主体的な態度を身につけてほしい

【中野さん】

・勉強を教えるから、学びを支援する立場へ

 →学びの支援とは何か、どうすればよいのか。が次の命題ではないか。

・キーワードは「エージェンシー」;目的意識をもって自ら歩んでいく生徒を育てるためには、まず「教師エージェンシー」が必要。教師自身が学び続ける必要がある。管理職の立場としては、その支援をしたい。


4.おわりに

【峯岸先生】

 本日は、各位適切なご発言を頂き、大変感謝する。社会科学習会は次代の教師を育てる会として歩んできた。本日の貴重な発言を糧に、今後も教師を支え育てる活動をしていきたい。

【岩谷先生】

 社会科がどうあるべきか、社会科教員として生きるとは何かを改めて考えた。私たち社会科教員は、現実の社会の動きに敏感になる必要がある。また、自分の考えをしっかり持ち、様々な考えやその根底にある判断や価値についてより深く知る努力をしながら、子どもたちに指導・支援していくべきである。

社会科学習会ホームページ

社会科学習会は、若手教員を中心に、中学校社会科の指導法や教材開発等について学びを深めたい人たちが集う会です。会長の峯岸誠先生(元 玉川大学教授、元全中社研会長)、岩谷俊行先生(元全中社研会長)のもと、東京都内で基本的に月一回定例会を開き、年に一回は巡検を行っています。学習会への参加は随時受け付けています。社会科の力を付けたい先生方、一緒に勉強しましょう!

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