12月25日(土)に文部科学省視学官・藤野 敦先生をお迎えし、ご講演を頂きました。大変多くの皆様のご参加を頂きました。改めて、皆様方の専門性向上への意欲を感じました。その概要をお届けします。
1.はじめに
1990(平成2)年、中学校で授業を行っていた頃、ソ連邦の崩壊など冷戦の終結を体験し、現実の社会にはマニュアルがあるわけでもなく、どのように対応するかが必要となることを実感した。その考えは、現在の学習指導要領に通じるものがある。また、それ以前、大学で竹内誠先生(東京学芸大学名誉教授、江戸東京博物館名誉館長、2020年逝去)から、「卒論はしっかり書け、一つの研究が将来役に立つことがある。」と教わった。
2.補足資料1から ― 何を問うべきか。どう評価すべきか。―
「南鐐二朱銀」を資料として幕府の貨幣政策の意図を問う5つの設問を例に。求めるもの(解答)が知識なのか、理解した内容なのか、知識や概念的理解なのかは、問いによって様々になる。授業を通して生徒が学んだ学習の意義を問う設問の工夫が必要である。また、 個別的知識の獲得に止まらず、概念の理解に至らせる工夫が求められる。
なお、生徒に文章で説明させるのみで、「思考」について評価できるというものではないということに留意すべきである。
3.「指導と評価の一体化」の実現に向けた授業改善から
◆課題を追究したり解決したりする活動 → 資質・能力育成へのプロセス(=日常の授業のプロセス)
・導入(イメージ、見通し)→ 学習 →まとめ(学習の振返り、生徒自身の変革)
◆「単元や内容のまとまり」で学習課題を設定する → そのためには「考えさせる資料」が必要
◆学習活動の設定と、見方・考え方を働かせることのできる問いの例
・小学校の学習では、変化を「事実の変化」から捉える(何が変わったか)
⇒ 中学校の学習・・・変化を「背景の変化」から捉える(何が変わったから変化したのか)
・教科書の資料の活用場面で「この資料から分かることは何か?」
⇒「2つの資料を重ねて考えると、どのようなことが言えるか?」 等
◆「主体的に学習に取り組む態度」の評価について
・単元の導入の「見通し」とまとめの「学習の振返り」を生徒自身に比較させる。
・内容の振り返りもさることながら、自身の学びの変化(自己調整)を読み取らせる。
◆「観点別学習状況の評価」のイメージ例から
・学習指導要領の内容の書き方は文言を3観点と対応 ⇒ 評価規準も、中項目と連動
・指導の改善が図られてこそ、評価の改善が実現する。
4.補足資料2から ― 「身近な地域の歴史」の学習から獲得する喜び ―
◆生徒と地域、日本、世界の関係の変化
・グローバル化の進展や社会の急速な変容
⇒ 自己からの同心円的な認識の拡大から、自己と地域、日本、世界相互が重なり合うベン図的な関連による認識へと変化している
◆身近な地域の歴史を学ぶこと・・・様々な世界との新たなつながりを発見したり、自己の生活を問い直すことにつながる。
◆学習の実践におけるまとめのプリント(1996)にあった生徒の一言
「過去の人々は様々なものを現在に残してくれた。でも、今の僕たちは未来の人たちにいったい何か残せるものを作っているのだろうか」
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