5 月に予定していた第 163 回社会科学習会は緊急事態宣言の発出に伴い中止としました。しかし、研究活動は日々、授業改善を求められる教師にとって不要不急とは言い切れません。また、新型コロナウイルスの蔓延を防ぐためには予防と治療の対応が必要ですが、現在は予防(ワクチン接種)のみで、治療薬の開発は遅れています。治療薬の開発が進むまでは、各自が十分な予防を心がけ日常生活を進める必要があります。それが、今求められる新しい日常ではないかと考えます。
前置きが長くなりましたが、そのような判断で 6 月の会を6月 12 日(土)に牛込箪笥地域センターで開催しました。当日の発表概要は下記の通りです。
1.評価 ー「デジタル採点ソフトの使用」ー 木村 諭先生(江戸川区立上一色中学校)
(1)デジタル採点ソフト導入の経緯
・初任校では1~3年まですべてを担当していた。試験の採点に当たり、「記号問題の採点は、人間でなくてもできるのではないか」と疑問を持った。
・現任校で、数学科の同僚から採点ソフトがあることを教えてもらった。文京区でも導入予定があるようだ。
・使用しているのはスキャネット株式会社が開発した「デジらく採点」で採点時間はおよそ半分~3分の1に短縮された。記号式の同じ問題は一括採点、記述問題は解答用紙に直接採点し、点数をデジタルデータに足すこともできる。
・導入に当たり最初の準備に少し手間がかかるが、慣れてくればさほど問題はない。答案の返却は、プリントアウトした「スキャン&採点データ」と「原本」の2枚を返却する。データが残るので答案の紛失等も防げる。
(2)必要な機材やコスト
・ソフトは無料版を使用している。専用の用紙が 1000 枚で 1 万 5 千円。これは教材費として徴収、一人あたり年間 165 円程度になる。
・ドキュメントスキャナ(読み取り、データ保存)の整備が必要である。
(3)今後の展望
・採点時間の短縮ができ、結果がエクセルに集計されるので問題の分析が楽にできる。
・採点の電子化はすでに全国学力調査等にも使われ始めている。
・効率化することで、さらに記述問題等の採点に時間をかけることが可能になる。
・都立高校のような記号問題の作成にも挑戦してみたい。
(4)スキャネット㈱ 営業部 浦谷様から
・「デジらく採点2」の紹介とデモンストレーションがあった。
・Google Classroom での返却も、アカウントを紐づけておけば可能である。
○質問
・機械採点で、判断がつかない解答は? → 未採点となり、教員が判断するようになる。
・複数完答のような自動採点に対応しているのか? → 今後のバージョンアップで変更予定
・クロス集計はできるのか? → 今のところ未対応。
・地図などをなぞったり着色したりする採点も可能か? → 教員採点で可能。
・生徒にとってのメリットはあるか?
・予算の出どころは各校どうなっているか?→そこまでは把握していない。
2.小学校社会科における地域史の実践 峯岸 誠先生(社会科学習会 会長)
(1)授業の主題「戦災から復興へ そして今」
・小学校 6 年生の社会科の歴史の最後の単元「新しい日本 平和な日本へ」は戦災からの復興、国際社会への復帰と経済成長、これからという 3 期で構成されている。教科書では新宿駅東口のそれぞれの光景が資料写真として掲載されている。これを児童の身近な地域の状況に置き換えて疑似体験的な学習とする。
(2)授業の工夫
・地域の変化を年代の異なる地形図と同じ場所の年代の異なる写真を比較し、理解させることとした。
・地形図は授業校(杉並区立堀之内小学校)が中心になるよう構成し、読み取りの際には常に学校の場所を確認させた。
(3)資料の工夫
・地形図:授業校は戦災を受けているので、戦前、終戦直後、昭和 33 年、平成 13 年を準備、併せて区内の戦災の被害地図を準備した。
・写真:児童が変化を身近に感じられるように学区域と隣接する地域の光景を昭和 30 年代と現在が比較出来るように構成した。
(4)児童の反応
・昭和 30 年代の学校周辺の牧歌的な様子や学校が戦災で焼失したことなどに興味を持ち、身近な地域の変化を見直す契機になったようである。
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