第160回の学習会はこれまで通り牛込第一中学校を会場として開催することが出来ました。これも学校関係者の皆様方のご理解によるものと、心より感謝申し上げます。
今回は、今回は社会科学習会を研究グループとして認定下さり、支援していただいている東京都金融広報委員会から講師をお迎えしました。講師は同会の事務局長坂本直久氏で演題は「新型コロナウイルスと世界・日本経済」でした。以下に講演の概要と質疑等を記します。
1 自己紹介
坂本氏は1972年岡山県に生まれ、大学の卒業は1994年でバブル崩壊後の就職氷河期の年代に当たります。志望した業界とは異なり金融界(日本銀行)に就職し、神戸、高松、広島支店などに勤務、その間には破綻銀行の処理にも従事されたそうです。更には、金融機構局という、まさに半沢直樹の世界にも従事されたそうです。また、仕事を離れては地元のちびっこ農園の副会長として地域にも貢献されているとのことです。
2 日本の特性
我が国は、安心や安全が重視されており、国家への不信感は少ない。それは教育の成果と思われる。また、今回の対応として全国民に所得制限等をせず一律に10万円の現金給付(総経費は12兆8803億円)をしたが、主要国では日本及び韓国のみである。それが消費に回るという前提であったが・・・。
3 世界経済の現状
ロックダウンや移動、イベントの制限などの結果、世界経済は前年比マイナス4.4となる。そこで、各国はかつてない規模かつ迅速な政策対応をした。世界全体の経済対策規模は約12兆ドル(約1.300兆円)で対GDP比8.5%(IMF、10月13日時点)となっている。先進国ではドイツ(約155兆円 37%)、イタリア(約75兆円 34%)、英国(約80兆円 26%)、フランス(約72兆円 24%)、カナダ(約37兆円 20%)、米国(約355兆円、15%)となっている。日本は、約233兆9千億円、対GDP比42%である。
4 日本経済の現状
(1)2月以降、インバウンド需要(約4兆8千億円)が消失、外出自粛等により個人消費も落ち込む。さらに貿易相手国のロックダウンなど経済活動の停滞により外需も大幅に減少。
(2)政府は、民間への直接的な資金移転や公共投資など、予算補正(1月、4月、6月)を行い積極的な財政出動により需要の喚起を図った。本年度の第二次補正後の予算概要は下記。<歳出> <歳入>
一般歳出 120.4兆円 税 収 63.5兆円
当初 63.5兆円
1次補正 25.5兆円
2次補正 31.4兆円 その他収入 6.6兆円
地方交付税交付金 15.8兆円
当初 15.8兆円
国債費 24.0兆円 公債金 90.2兆円
当初 23.4兆円 当初 32.6兆円
1次補正 0.1兆円 一次補正 25.7兆円
2次補正 0.5兆円 二次補正 31.9兆円
計 160.3兆円 計 160.3兆円
(当初予算 102.7兆円、公債依存率 56.3%)
(3)債務残高の対GDP比は、1990年代後半に財政健全化を進めた主要先進国と比較して我が国は急速に悪化しており、最悪の水準である。
①世界各国が財政出動をしている中で日本だけが財政健全化を理由として見送ることはできない。
②アルゼンチンやギリシアは財政破綻したが、日本の国債の90%が国内保有されているので安心できる。また、償還期の10年後は高齢化が進み貯蓄は減少、日本規格にこだわる日本製品の海外市場は限定的である。何よりも日本・政府への信頼感が国民に有るので心配はない。
5 コロナ禍の事象の社会科の授業への活用
具体例を大変多く示していただきました。
6 質 疑
①国債の引き受け先は?
日銀が50%程度、他の多くは市中銀行。市中銀行にとって国債は資産に含まれず、日銀からの融資の担保となるのでリスクはない。
②消費税の引き上げは今後あるのか?
我が国の生産が低く、賃金上昇が見込めないので今は無理。社会保障費がここ30年間に3倍になっている現実はあるが、消費税引き上げのためには賃金上昇が必要。
③国債依存率を下げるには?
家計は特別定額給付金も含めて貯蓄を増やし、高福祉を求めている。また、国政には関心が低く(低投票率)、租税負担を忌避する傾向がある。企業は内部留保が大きい。一方、国家はそれらの国民の意向に応えるために公債残高が増加する。最終的には誰が経費を負担するのかが命題となる。
④財政健全化をめざすには?
もっともな話である。しかし、世界各国が財政出動をしている現在健全化を目指せば世界で日本は孤立する。また、急激に健全化を目指せば日本は信用がなくなったとされる。信用の上に今の日本経済がある。受益と負担について、世界と比較する必要がないか? 特に高齢化への対応について。
前回の巡検同様に多くの皆様の参加を得て、大変活気のある会となりました。
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